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標準偏差はなぜ2乗するのか|絶対値を使う平均偏差との違い

偏差をそのまま平均すると必ず0になるので、打ち消しを防ぐために2乗するか絶対値を取ります。絶対値を使うのが平均偏差、2乗を使うのが標準偏差です。同じ平均偏差でも標準偏差が違う3つの例で、2乗が大きな離れを重く数えること、平均と組みになる理由、平均偏差を使ってよい場面を確かめます。

公開読了目安 約6分

この記事の要点

  • 偏差をそのまま平均すると必ず0になるので、2乗するか絶対値を取って打ち消しを防ぐ
  • 絶対値の平均が平均偏差、2乗の平均の平方根が標準偏差
  • 2乗は大きな離れを重く数えるので、平均偏差が同じでも標準偏差は違うことがある
  • 2乗の合計は平均のところで最小になり、絶対値の合計は中央値のところで最小になる
  • 標準偏差は平均偏差より小さくならない。正規分布なら平均偏差は標準偏差の約0.8倍
目次

標準偏差で偏差を 2 乗するのは、偏差をそのまま平均すると、プラスとマイナスが打ち消し合って必ず 0 になるからです。 打ち消しを防ぐ方法はもう 1 つあり、絶対値を取って平均したものを「平均偏差」と呼びます。

2 つは似た数字に見えますが、大きく離れた値の数え方が違います。 この記事では、平均偏差が同じなのに標準偏差が違う 3 つのデータで、その違いを確かめます。

標準偏差の計算手順そのものは、標準偏差の求め方の記事で扱っています。 ここでは「なぜ 2 乗なのか」に絞ります。

偏差をそのまま平均すると0になる

例として、5 人の点数「40・50・60・70・80」を使います。 平均は 60 点で、偏差は −20・−10・0・10・20 です。

偏差を足すと −20 − 10 + 0 + 10 + 20 = 0 です。 平均は「偏差の合計が 0 になる点」なので、どんなデータでも同じことが起きます。

散らばりを 1 つの数にするには、マイナスの符号を消してから平均する必要があります。 消し方は、絶対値を取るか、2 乗するかの 2 通りです。

消し方計算名前この例の値
絶対値を取る(20+10+0+10+20) ÷ 5平均偏差12
2 乗する√((400+100+0+100+400) ÷ 5)標準偏差約 14.14

2 乗した方は単位が「点の 2 乗」になるので、最後に平方根を取って点に戻します。 平方根を取る理由は、分散と標準偏差の違いで詳しく書いています。

平均偏差が同じでも標準偏差は違う

平均がどれも 60 点で、平均偏差もどれも 12 点になる 3 つのデータを並べました。 標準偏差は母標準偏差(n で割る方)です。

データ平均からの離れ平均偏差標準偏差
A:45・45・60・75・7515・15・0・15・1512約 13.42
B:40・50・60・70・8020・10・0・10・2012約 14.14
C:30・60・60・60・9030・0・0・0・3012約 18.97

平均からの離れを足すと、どれも 60 点です。 平均偏差は、この 60 点を 5 人で割っただけなので、3 つとも同じになります。

標準偏差は、C がいちばん大きく出ました。 C は 3 人が平均ちょうどで、2 人だけが 30 点ずつ大きく離れています。

2乗は大きな離れを重く数える

離れが 15 点の人と 30 点の人を比べると、絶対値では 2 倍の違いです。 2 乗すると 225 と 900 になり、違いは 4 倍に広がります。

A の 2 乗の合計は 225 × 4 = 900、C は 900 × 2 = 1,800 です。 離れの合計は同じでも、大きな離れが少数いる C の方が、2 乗の合計は倍になります。

標準偏差は平均偏差より小さくならない

3 つの例では、どれも標準偏差の方が平均偏差より大きく出ました。 これは偶然ではなく、どんなデータでも、標準偏差は平均偏差を下回りません。

標準偏差は、離れの 2 乗を平均してから平方根を取った値です。 この「2 乗平均の平方根」は、離れをそのまま平均した値を下回らないことが知られています。

2 つが等しくなるのは、全員の離れが同じ大きさのときだけです。 たとえば「50・70」の 2 人なら、どちらも平均 60 から 10 点離れていて、平均偏差も標準偏差も 10 です。

標準偏差を「平均からの平均的な離れ」と読まない

平均偏差は、文字どおり「平均から平均で何点離れているか」を表します。 標準偏差はそれより大きく出るので、同じ読み方をすると散らばりを大きく言いすぎます。

B のデータなら、5 人の離れの平均は 12 点です。 標準偏差の 14.14 点を「平均的に 14 点離れている」と言い換えるのは誤りです。

2乗の合計は平均のところで最小になる

標準偏差が 2 乗を使う理由の 1 つは、平均と組みになっていることです。 「どこから測ると離れの合計がいちばん小さくなるか」を比べると分かります。

5 回の作業時間「12・14・16・18・40 分」で試します。 平均は 20 分、中央値は 16 分です。

測る基準離れの絶対値の合計離れの2乗の合計
平均(20 分)から40520
中央値(16 分)から32600

2 乗の合計は平均から測ると小さく、絶対値の合計は中央値から測ると小さくなりました。 2 乗の合計がいちばん小さくなる点はいつも平均で、絶対値の合計では中央値です。 件数が偶数なら、真ん中の 2 つの値のあいだはどこでも同じ最小値になります。

どこを基準にしても、2 乗の合計が平均から測ったときより小さくなることはありません。 標準偏差はこの最小の値から作るので、平均とセットで報告する数として筋が通っています。

標準偏差の方がよく使われるほかの理由

2 乗には、散らばりを足し算で扱えるという性質もあります。 独立な 2 つの量を合計したときの散らばりは、標準偏差ではなく分散(2 乗した値)を足して求めます。 くわしくは分散と標準偏差の違いで例を挙げています。

偏差値や Z スコアも、標準偏差を物差しにしています。 値が平均から標準偏差の何個ぶん離れているかを数えるので、平均偏差に取り替えると別の数になります。 Zスコアの求め方も参考にしてください。

平均偏差は標準偏差の何倍か

データが正規分布に従うとき、平均偏差は標準偏差の約 0.8 倍(√(2/π) ≒ 0.798)になります。 これは分布の形を決めたときの値で、データによって比は変わります。

データ平均偏差 ÷ 標準偏差
A:45・45・60・75・75約 0.89
B:40・50・60・70・80約 0.85
C:30・60・60・60・90約 0.63

この 3 つでは、少数の値が大きく離れている C で比がいちばん小さくなりました。 平均偏差を「0.8 で割って」標準偏差を見積もるのは、正規分布に近いと分かっているときに限ってください。

平均偏差を使ってよい場面

説明のしやすさを優先するなら、平均偏差は分かりやすい数です。 「平均から平均で 12 点離れている」と、そのまま言葉にできます。

一方、正規分布の割合(平均±標準偏差に何%入るか)や偏差値と並べるなら、標準偏差を使います。 他の人の結果と比べる場面では、相手が使っている方にそろえてください。

平均偏差と標準偏差を求める

Excel では、平均偏差を AVEDEV 関数で求められます。 各値と平均との差の絶対値を平均する関数です。 セル範囲で指定したとき、空白や文字列のセルは数に入りません。

平均・標準偏差計算ツールには平均偏差の欄はありません。 数値を貼ると平均と母標準偏差・不偏標準偏差が出るので、平均偏差は出た平均を使って計算し、標準偏差と並べてください。

B のデータを貼ると、平均 60・母標準偏差 14.142136 と出ます。 平均偏差の 12 と比べると、標準偏差の方が 2 点ほど大きいことが確かめられます。

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参考・出典

本記事は上記の公的機関・公式情報源を参考にしています。最新の情報は各リンク先をご確認ください。

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